【基礎】骨化の様式(膜性骨化・軟骨内骨化)


●各論
膜性骨化

②軟骨内骨化

追記
①軟骨基質はプロテオグリカンと線維成分に富んでいる
プロテオグリカンはマイナスに帯電しており、水分と結合しやすい性質を持つ
②Bone coller(骨性の膜)の内部は血流が途絶してしまうため中の軟骨細胞は死滅してしまう
よって空隙が生じる

⑥イメージとしては軟骨細胞が森林伐採し、骨芽細胞が道路を整備する感じか?

↑軟骨細胞層

↑骨芽細胞層


↓メカニズム
軟骨細胞の増殖は表層で行われる 深層に向かうにつれて細胞肥大が生じていずれアポトーシス(細胞死する)
アポトーシスで生じた空隙に骨芽細胞が類骨形成し石灰化を進める

【基礎】骨の細胞(骨芽細胞,骨細胞,破骨細胞)

●総論
①骨の外側で骨芽細胞が骨作る
②骨芽細胞が自らの作った骨に埋もれて骨細胞になる
③骨の内側で古くなった破骨細胞が骨を壊す
というのがざっくりとした流れ

●各論(関連疾患や薬剤も交えて説明)
①骨芽細胞
骨形成細胞から分化したもの骨の表層で骨を作成
※厳密には類骨層を形成
類骨がカルシウム・リンと結合しハイドロキシアパタイト結晶となり膠原繊維の間に沈着し骨基質となる。

リンが何かしらの理由で低下すると結晶を作れなくなるため骨強度は弱くなる
(所謂くる病・骨軟化症状態)

②骨細胞
骨芽細胞が自ら分泌した骨基質に閉じ込められたもの
骨小腔に収まる
周囲の骨細胞同士と突起で連結し情報交換骨にかかる負荷を監視
FGF23(リン排泄するホルモン)やスクレロスチン(骨芽細胞分化抑制するホルモン)も放出
※FGF23産生低リン血症性くる病・骨軟化症も存在する
X染色体遺伝性かFGF23産生腫瘍によることも
ビタミンD製剤使用しても効果が乏しいのが特徴(血中Caは正常)


※スクレロスチンの働き
①骨芽細胞を活性化させるWnt因子を抑制
②破骨細胞を活性化させるRANKL分泌を促進

ちなみにRANKLが破骨細胞に結合するのを邪魔する薬が
デノスマブ(プラリア)
スクレロスチンが各因子と結合するのを邪魔する薬が
ロモソズマブ(イベニティ)
各働きから考えるとプラリアは骨を固くのみだが、イベニティは骨を固くする&骨を新しく作る効果がある
※但しどちらの薬剤も古い骨は残ったままである



また定期的に骨に刺激がないと、スクレロスチンが分泌亢進し骨が脆くなってしまう

③破骨細胞
●機能
骨を破壊(吸収)する→古くなった骨を新しくする為
※メカニズム
酵素や水素イオンを放出し骨コラーゲンやカルシウム塩結晶を融解させる
●構造
多核細胞(5~20個)
骨との接触面は【波状縁(Ruffled border)】を形成
→アクチンフィラメントが多く含有しており明帯とも言われる

骨吸収で生じた凹みを【Howship窩】

●機能調節
副甲状腺ホルモンで促進→血中Ca濃度上げたいから
カルシトニンで抑制

※血中カルシウムが低下したときも破骨細胞が活躍する
副甲状腺ホルモン(PTH)が血中Ca下がった時活性化するのは
PTH分泌→破骨細胞活性化→骨溶かす→血中Ca上げる
という理由のため

【脊椎】硬膜内髄外腫瘍

実臨床では髄膜腫と神経鞘腫の鑑別をつけるのが大事(私見)
以下髄膜腫と神経鞘腫の鑑別
●共通項
①MRI
T1強調で低~等 T2強調で等~高信号
②手術適応
症状を有した時(おおよそ下肢痛や感覚障害、筋力低下等)
③良性腫瘍
ガンの様に他の部位に転移はしない


↑このような人工硬膜を摘出後用いる

神経根だと末梢神経に相当するので下図が当てはまる

いわゆる砂時計腫(ダンベル腫瘍)

おまけ
私が用いている髄膜腫・神経鞘腫鑑別フローチャート

【脊髄】慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

※厳密には神経内科領域の疾患だが、腰部脊柱管狭窄症と鑑別を要する事もあるので脊椎枠に

●鑑別
ギラン・バレー症候群
・類似点
末梢神経が自己免疫により侵される
(厳密にいうとCIDPは自己免疫かどうかは仮説レベル)

運動神経が侵されやすい

・相違点
ギラン・バレー症候群は一過性
CIDPは寛解と再燃を繰り返す

ギラン・バレー症候群は呼吸筋や脳神経に障害生じることもある
CIDPは稀

●整形外科領域で気をつける事
脊柱管外の神経根や神経叢がMRIで腫大+四肢しびれ・運動障害あればCIDPも考慮
神経内科に相談すること

↓他追記項目
●疫学
2-5/10万人

●症状
箸が持てない、腕が上がりにくい等
疼痛は伴わない事多い

●予後追記
3種類の治療法のいづれかは効果あること多く予後良好ではあるが
神経根腫大は非可逆的で戻らない

●医療補助について
CIDPは指定難病に該当し、医療費助成対象疾病に含まれる為申請忘れずに



↓参考サイト
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4089#:~:text=%E6%85%A2%E6%80%A7%E7%82%8E%E7%97%87%E6%80%A7%E8%84%B1%E9%AB%84%E6%80%A7%E5%A4%9A%E7%99%BA%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%82%8E%EF%BC%88chronic,%E7%96%BE%E6%82%A3%EF%BC%88%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%82%8E%EF%BC%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

https://radiopaedia.org/articles/chronic-inflammatory-demyelinating-polyneuropathy

【海外文献】大腿骨変形メインの内反膝はLateral Closed Wedge DFO(LCWDFO)単独も有効


●文献
Rupp MC, Lindner F, Winkler PW, Muench LN, Mehl J, Imhoff AB, Siebenlist S, Feucht MJ. Clinical Effect of Isolated Lateral Closing Wedge Distal Femoral Osteotomy Compared to Medial Opening Wedge High Tibial Osteotomy for the Correction of Varus Malalignment: A Propensity Score-Matched Analysis. Am J Sports Med. 2023 Feb;51(2):437-445. doi: 10.1177/03635465221142615. Epub 2023 Jan 11. PMID: 36629434; PMCID: PMC9909033.

●背景
内反膝は伝統的に脛骨骨切りで対応するが、術後脛骨冠状面関節面傾斜(KJLO)は外反してしまう。
本来KJLOは立位時地面と並行であるのが理想
なのでこの文献ではKJLOが術前後でどうなるか、2群間でどうなるかを裏で着目している


大腿骨ベースの内反膝はKJLOが2.2°外反だが、内側開大式高位脛骨骨切り術(MOWHTO)行うと術後更に3~5°外反する
Goshima K, Sawaguchi T, Shigemoto K, Iwai S, Fujita K, Yamamuro Y. Comparison of Clinical and Radiologic Outcomes Between Normal and Overcorrected Medial Proximal Tibial Angle Groups After Open-Wedge High Tibial Osteotomy. Arthroscopy. 2019 Oct;35(10):2898-2908.e1. doi: 10.1016/j.arthro.2019.04.030. PMID: 31604511.

術後KJLOが4°以上だと不適切な接触圧の為か術後不良となるPark JG, Han SB, Jang KM. Association of preoperative tibial varus
deformity with joint line orientation and clinical outcome after open￾wedge high tibial osteotomy for medial compartment osteoarthritis:
a propensity score-matched analysis. Am J Sports Med. 2021;
49(13):3551-3560

また術後MPTA(脛骨骨軸と脛骨関節面内側との角度)が95°以上になっても関節内側に荷重かかるようになるため予後不良
Akamatsu Y, Kumagai K, Kobayashi H, Tsuji M, Saito T. Effect of
increased coronal inclination of the tibial plateau after opening-wedge
high tibial osteotomy. Arthroscopy. 2018;34(7):2158-2169.e2152.

※ちなみに大腿骨と脛骨両側骨切りするDouble Level Osteotomy【DLO】ならKJLOは生理的に正しい形態を維持できるとされる


画像引用
Nakayama H, Iseki T, Kanto R, Kambara S, Kanto M, Yoshiya S, Schröter S. Physiologic knee joint alignment and orientation can be restored by the minimally invasive double level osteotomy for osteoarthritic knees with severe varus deformity. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2020 Mar;28(3):742-750. doi: 10.1007/s00167-018-5103-3. Epub 2018 Sep 8. PMID: 30196434.

では閉鎖型大腿骨遠位骨切り術(LCWDFO)でも矯正できるのになぜ伝統的にMOWHTOが行われているのか?

①DFOは深屈曲時の大腿骨ー脛骨接触面積や接触圧が課題となりやすいため
Wylie JD, Scheiderer B, Obopilwe E, et al. The effect of lateral open￾ing wedge distal femoral varus osteotomy on tibiofemoral contact
mechanics through knee flexion. Am J Sports Med. 2018;46(13):
3237-3244

②そもそも大腿骨変形ベースの内反膝が全体の8%程度しかない
Feucht MJ, Winkler PW, Mehl J, et al. Isolated high tibial osteotomy is
appropriate in less than two-thirds of varus knees if excessive over￾correction of the medial proximal tibial angle should be avoided.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2020;29(10):3299-3309.

●大腿骨変形ベースの内反膝ならLCWDFO単独でも伝統的なMOWHTOと同等の成績を出せるのでは?
というのが研究の目的である。

◯結果

術前のKJLO(黄色線)が上、術後が下
LCWDFOはKJLが大きい 術後のJLCA(関節面傾斜)はどちらも4°以内に収まっている
KJL≒JLCAと考えても良い・・・

となるとLCWDFOはKJLの上昇を防げたということにもなる

●文献の限界点
1️⃣術後全下肢長尺撮影がなされていないため下肢全体の形態が分からない
2️⃣そもそも母集団のベースが違う(MPTA小さいのはMOWHTO、mLDFA大きいのはLCWDFO)なので真の比較研究ではないのでは?
MOWHTOとLCWDFOは真に同等の成績とは言えないのでは?

→もしMPTA<87°群のみで検討していれば、説得力増したかもしれない







【病棟管理】網状赤血球指数(RI:Reticulocyte Index)


●網状赤血球の増減のイメージ
人手(成熟赤血球)が足りなくなり若手(網状赤血球)が駆り出されている状態
太平洋戦争で兵が足りなくなり赤札で戦場に招集されるようなイメージか



●鑑別(整形外科領域の主観交えて)
RI≧2の場合(血液は作り出せる}
◎溶血の有無を確認
①溶血(+)の場合
自己免疫性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間血色素尿症等
②溶血(-)の場合
出血(特に外科系なら術後出血が心配)

RI<2の場合(血液作り出せない)
◎MCVを確認し、大球性貧血・正球性貧血・小球性貧血で鑑別
①大球性貧血
ビタミンB12や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血
整形外科領域なら関節リウマチ治療でのメトトレキサートによる葉酸代謝障害か?

②正球性貧血
慢性腎臓病による腎性貧血、脾腫による機能亢進症、甲状腺機能低下症等

③小球性貧血
→フェリチンを確認
●低下時:鉄欠乏性貧血
●正常時:慢性疾患(炎症)等による鉄利用障害
※整形外科領域なら感染・脊椎関節炎・関節リウマチあたりか

【統計】Cox回帰分析(ざっくり)

●適応条件

比例ハザード性(どの時間においても群間で

一定のハザード比が保たれていること

◯計算式

 左図 煩雑なので統計解析アプリやソフトを用いる(Staat Appが有用?)
●似たような統計解析
Kaplan-Meier 法が有名 こちらも生存率評価だが1変数しかできない
例:大腸癌術後リンパ節有った場合どれだけ生存できるか?等

【肘】小児肘関節脱臼・骨折レントゲン評価

●追記
①Fat pad sign→通常骨にくっついている脂肪組織が血腫等で剥がれてしまうこと
撓骨頭骨折・上腕骨顆上骨折の場合は骨折線が必ずしもみられるわけではない。Posterior fat padは骨折や炎症で液体貯留が起こり,骨に付着している脂肪層がはがれて初めて確認できる。
Anterior fat padは通常でも確認できるので後方を評価したほうがいいかも
参考サイトhttps://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2011/PA02936_06

●小児肘関節Xp見る時の重要知識→軟骨骨化順を覚える
CRITOE(クリトエ)で覚える。2xー1歳で骨化する。
Capitellum→上腕骨小頭(1歳)
Radial head→橈骨頭(3歳)
Internal Epicondyle→上腕骨内側上顆(5歳)
Trochlea→上腕骨滑車(7歳)
Olecranon→肘頭(9歳)
External Epicondyle→上腕骨外側上顆(11歳)

【スポーツ】肉離れ

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●損傷度に応じた戦略(上級医の指導内容)
0:初診時
まずMRI取ってみること
エコーで中間筋膜に出血あれば膝屈曲維持で過ごしたほうがよい
→血腫溜まったら可動域制限生じる事あるため
ストレッチで疼痛誘発されるか?
→あればⅠ度 なければⅡ度(JOA 2020 教育研修講演 肉離れの治療戦略】

1:受傷後
JISS 1度:2週は競技休む 疼痛に応じて復帰可
JISS 2度: 6週は競技休む
JISS3度:腱完全断裂あれば縫合再建術も?? 復帰は数ヵ月 MRIみて腱膜修復度で判断

※基本MRIを初診1ヵ月後取って再評価する

2:平均競技復帰期間
1度2週
2度:6週
3度:20週

参考文献
奥脇 透ら,大腿二頭筋肉ばなれの MRI 分類
日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 27 No. 2, 2019.

【膝】人工膝関節再置換術術前計画

●補足
①大腿骨骨欠損に対する対応法
※初回手術の緩みや抜去時に骨欠損生じやすい

様々な金属補填材があるので対応できることが多いのでまず考慮
ギリギリの場合は同種骨や同種骨移植部を覆う金属製メッシュも考慮

◎欠損
<5mmセメント対応
5〜10mm<金属ブロック補填
10mm< 髄内はコーンで補填 骨欠損部は同種骨移植で対応考慮

②Joint lineを再現しないとだめな理由
→前後不安定性が生じるため
以下論文ではjoint lineを4mm上げた場合PF関節圧も屈曲90度時に著明に上がったと言及
なお2mm程度なら許容できる模様
Watanabe M, Kuriyama S, Nakamura S, Nishitani K, Tanaka Y, Sekiguchi K, Ito H, Matsuda S. Impact of intraoperative adjustment method for increased flexion gap on knee kinematics after posterior cruciate ligament-sacrificing total knee arthroplasty. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2019 Mar;63:85-94. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2019.02.018. Epub 2019 Feb 27. PMID: 30851566.